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公開日:2018.06.06

連載好きを叶えた人たち

vol.05

「子育ても仕事もしたい!」一歩踏み出すカギは...?

写真:「子育ても仕事もしたい!」一歩踏み出すカギは...?

「仕事も子育ても、しっかりやりたい」。女性たちのそんなごく自然な願いをかなえるサポートをしているのは、千葉県流山市でシェアサテライトオフィス「Trist(トリスト)」を運営している尾崎えり子さん。クラウドファンディングを活用してオフィス設立資金を集め、テレワークという方法によって、一度は仕事を離れた女性たちがキャリアを活かして働く取り組みを進めてきました。その実績が今、多くの企業や女性たちから注目を集めています。仕事と育児の両立に悩んだご自身の体験や、女性たちが仕事を再開するためのポイントを伺いました。

画像:尾崎えり子

PROFILE

尾崎えり子
千葉県流山市で6歳と4歳の子どもを育てるワーキングマザー。大学卒業後、経営コンサルティング会社に勤務。結婚を機に転職し子会社の設立に参画、第一子の育休復帰後、代表取締役に。第二子の育休後に退職し、2014年7月に株式会社「新閃力」を設立。流山市を中心に母親たちのキャリア支援と子どもたちのキャリア教育を行い、2016年よりシェアサテライトオフィス「Trist」の代表も務める。

子どもにも会社にも、謝ってばかりのワーキングマザー生活

仕事中心の生活を送っていた私が東京の都心から千葉県の流山市に引越してきたのは、第一子を妊娠していたころ。縁もゆかりもない土地だったんですが、私自身が野山を駆け回って育ったこともあり子育ては自然が豊かなところでしたいと考えていたからです。その点、流山市には子どもが遊べる森があって、都心の勤務先にもドアtoドアで40~50分程度。仕事も育児もしっかりしたい私にぴったりだと思ったんです。

画像:子どもにも会社にも、謝ってばかりのワーキングマザー生活

ところが第一子を出産したら、思わぬ壁にぶつかりました。まず、"母性"は子どもを産んだ瞬間、自然に出てくるものだと思っていたのに、出産初日から仕事のほうが気になってしまって愕然(苦笑)。それに、いざ職場復帰してみたら、1時間かからなかった通勤時間が、保育園に子どもを送って車を置いたりしていると1時間半はかかる。会社にもうすぐ着く...というときに保育園から「熱が上がったのでお迎えに来てください」と電話がかかってきてトンボ帰りすることもしばしば。子どもに対しても「よりによってこんな忙しいときになんで熱を出すの?」とイライラしてしまう自分に嫌気がさし...、罪悪感ばかりで苦しい時期でした。

"理想の母親像"から抜け出したら、ラクになった

ふたり目の育休中は、「私はどんな母親になりたいのか」「どんな人生を歩みたいのか」とあらためてじっくり考えてみました。理想像は、子どものことをいちばんに考えて、おいしい料理を作って夫を出迎え、会社でも上司の期待に120%応えて結果を出せるワーキングマザー。でも実際はそんなキラキラした母親になることはできなかったし、何より私は、子どものためではなく、自分の人生をやりたいように生きたいのだと再認識したんです。

そのとき出した結論は、「私が家の中で笑っていることがすべて」だということ。頑張って料理を作ることでイライラするくらいだったら、夕飯がお惣菜でも、子どもがママと一緒にいる時間を楽しく過ごせたほうがいい。そのためにも、通勤に長い時間を割くのではなく、会社を辞めて流山市で起業することにしました。

地元で、キャリアを活かして働きたい

画像:1拠点目「Trist-Station-」は2016年5月にオープン
▲1拠点目「Trist-Station-」は2016年5月にオープン

民間学童のプロデュースや流山市「創業スクール」の運営を経て、2年後に立ち上げたのが、シェアサテライトオフィス「Trist」です。キャリアを活かして地元・流山市で働きたいという女性を都内の企業に雇ってもらい、「Trist」でテレワークをしてもらうというシステム。

流山から都心への電車の定期代は月3万円弱なので、そのぶんを"席料"として企業に払ってもらい、キャリアのある人材が採用できるという、人材不足に悩む企業にとってもメリットの大きい仕組みです。アイデア自体は起業当初から温めていたんですが、私の全財産に市の空き店舗活用補助制度の補助金を加えてもお金が足りない! ...ということで、「クラウドファンディング」を活用して200万円を集めました。

クラウドファンディングとは、ある特定の目的のために、インターネットで不特定多数の人から資金を集める方法のことです。とはいえ、出資してくださる支援者のみなさんだって、どこの誰かもわからない人にお金を気前よく分けてくれるわけではありません。私がこの町で2年間、ママや子どもたちのプロジェクトを進め、全国各地の講演に行って、多くのお母さんや地域の方々とのネットワークをつくってきた結果、「尾崎さんがやるんだったら」と力を貸してくださったのだと思います。そして「Trist」は今も私だけではなく、地域の方々が"自分たちでつくった場所"という意識をもって運営してくれています。

2016年5月にオープンした「Trist」では、現在7社・27名が働いています。ありがたいことに人数が増えてそこが手狭になってきたので、今年の4月には2拠点目として「Trist-Airport-」も立ち上げました。

"ママ友だけ"の世界から、外をのぞいてみたら...

女性たちが企業に雇用される前段階として、「Trist」ではマイクロソフト社と一緒に、「ウーマンテレワーク 体験プログラム」という3週間の無料プログラムを実施しています。とはいえ、今どきインターネットはみなさん空気のように使っているし(笑)、エクセルやパワーポイントの使い方を一から教えるわけではありません。むしろ、技術の進歩でソフトなどの操作はかつてより簡単になっていることや、テレワークの実務やセキュリティー管理などを、実際にパソコンを触りながら体感していただきます。

画像:「ウーマンテレワーク 体験プログラム」では週5日間、2週間の講座と1週間のインターンを体験。
▲「ウーマンテレワーク 体験プログラム」では週5日間、2週間の講座と1週間のインターンを体験。これまで流山市以外にも、岡崎市(愛知県)や佐賀市(佐賀県)、みなかみ町(群馬県)でも実施された

実はそのような技術的なことよりもっと大切なことがあります。それは、「自分のキャリアを今後、どうやってつくっていくか」「自分の強みは何か」を考え、情報や仕事を"取りに行く"姿勢です。体験プログラムでも自分のキャリアについて考える時間を設けていますが、その一歩を踏み出すのに、インターネットはとても効果的なツールだと思います。いつも利用しているLINEやSNSだけではなく、さまざまな働く女性の記事を読んでみたり、女性たちがキャリアについて語るインターネット上のサークルに参加してみたり...。さまざまな生き方や働き方を見て、"ママ友"とのやりとりだけでは気づかない社会の価値観を知ることで、自分が本当は何をしたいのか、自分に正直に考えることができますから。

インターネットは「ハサミ」と一緒

ただし、インターネットの使い方には注意が必要です。うまく使えばすごくクリエイティブなものを生み出せるけれど、人を傷つけようと思えば簡単に傷つけることができる。ハサミと同じだと思うんです。でも、だからといってハサミを使わないで新しいものを生み出すことはできないじゃないですか。うまい使い方と、危険な使い方の両方を知ったうえで、いい使い方を選べる目を養ってほしいです。

また、わからないことは恥と思わず、積極的に人に聞くのがいいと思います。デジタルなことを学ぶのは必ずしもデジタルな方法じゃなくてもよいのでは? ひとりで解決しようとせず、たとえば「SNSの性格診断ツールなどを使うと、個人情報を抜かれるんですよ」といったことを、IT企業にお勤めのパパ友や通信会社をリタイアした近所のおじさまに教えてもらったっていいじゃないですか。

画像:どんな自分になってどんな生活を送りたいのか、考えることから始めてみてください。

ふつうにLINEを使っていたお母さんが、メルカリで少しずつ稼ぐようになって、慣れたら楽天市場に出し、売れるようになってきたら自分のECサイトをもつ。そんなふうに少しずつ段階を経て、仕事につなげているお母さんたちの姿も見てきました。でも、インターネットはあくまでも手段。どんな自分になってどんな生活を送りたいのか、考えることから始めてみてください。

【コラム】「クラウドファンディング」って何?

画像:どんな自分になってどんな生活を送りたいのか、考えることから始めてみてください。

crowd(群衆)とfunding(資金調達)を組み合わせた言葉で、インターネットを通して、クリエイターや起業家が、不特定多数の人から資金を募る仕組み。「利用したことはない」という人もまだまだ多いけれど、認知度は年々高まっています。

尾崎さんが2年前に「Trist」設立資金を集めたときは、111人の"支援者"がプロジェクトを支援。募集開始から1か月弱で200万円の目標金額を達成したそうです。「支援者の方には、支援してくださった金額に応じて、施設の壁に名前を記したり、サイトにお名前を掲載するなどの "リターン"をお返ししました」(尾崎さん)

【コラム】「テレワーク」ってどんな働き方なの?

インターネットなどの情報通信技術を活用して、場所や時間にとらわれることなく働く、柔軟な勤労形態のひとつ。自宅や、「Trist」のようなサテライトオフィス、または移動中や外出先からパソコンや携帯電話を使って業務を行います。

「育児と介護のダブルケアをしながら仕事と両立させる人も増えている今、通勤時間などが削減できるテレワークは、お母さんだけではなくすべての人が活用できる働き方です。とはいえ、『Trist』で働く女性たちもまったく会社に行かないというわけではなく、会議やセキュリティーが厳しい業務を行うために、週に1回程度、通勤している方もいます」(尾崎さん)

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