こころの栄養(連載コラム)

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第7回

大阪のおばちゃんに学ぶ愛嬌の極意 前垣和義

前垣和義(まえがき かずよし)
1946年、滋賀県生まれ、大阪府育ち。大阪研究家。『大阪のおばちゃんコレクション』(玄光社)など、大阪についての著書多数。

大声、ダミ声、大笑いの裏に隠されたもの、それは人情。自分も相手も快く過ごすためのアイデアに富んだ大阪のおばちゃんに、愛嬌(あいきょう)の秘密を教えてもらいましょう。

大阪のおばちゃんは、いつも人の役に立ちたいと考えています。人を笑顔にさせる、それこそが嬉(うれ)しく、最上級の喜びでもあるのです。市場で、見知らぬ人に、「別の店が安いで」と教え、そちらで買うように勧めるのもそのため。聞かれてもいないのに、料理の仕方のレクチャーもやってのけます。ですから、頼まれ事には、「よっしゃ、任しとき」と快諾。嫌々するよりも、進んでやるほうが楽しいと捉えます。街頭インタビューにも気軽に応じ、「キレイに撮ってや」の一語で相手の心を鷲掴(わしづか)みに。そして、質問にはボケとツッコミを織り交ぜて、取材陣を喜ばせます。時には、頑張りが度を超すこともありますが、それも溢(あふ)れるサービス魂ゆえ。愛嬌、愛嬌、憎めません。

これが、大阪のおばちゃんだ!! だから、おばちゃんは、愛される!

おばちゃんには、強烈なイメージがついて回りますが、実際はふつうのおばちゃんたち。その人々が、とてつもなく明るく、親切で、面白いのです。

おせっかいだけど親切
 道を聞かれればついて行って教え、ダメージジーンズをはいた娘さんの破れたズボンを哀れみ、「新しいの買い」とお金を渡そうとすることも。心をケチらぬ愛のある行為、それは親切です。

ツッコミ好きだけど情は厚い
 自分の得だけを考えるおばちゃんではありません。「兄ちゃんイケメンや」と店の人を笑顔にし、友人を紹介して店に貢献。その併せ技で、「3つ買うから1つタダな」のツッコミ。

大胆だけど人思い
 愛嬌と共に度胸もそなわっています。有名人でも垣根なし。背中を叩き「頑張りや」。大胆な柄の服も、「これで人さんを感動させ、話題がとれたら儲(もう)けもん」の思いを込めて着るのです。

おばちゃんが一人いるだけでも周りは元気に、明るくなる

棚の奥から賞味期限が長いほうの商品を引っ張り出すおばちゃんも、レジでお釣りを受け取るときには「ありがとう」を口にします。飲食店では「ごちそうさん」。店の人は仕事ですから、本来ならお礼の必要はないのですが、「皆、一生懸命。言って当たり前」と考えます。
 人への思いが強く、思いと言葉が一体です。お得な情報も独り占めにはせず、周りに知らせて得(喜び)を共有します。あなたがいれば、喜びは2倍になる、そういう生き方にまっしぐら。これこそが、おばちゃん。
 「厚かましい」などの先入観にとらわれていると、おばちゃんの明るさは見えません。

「飴ちゃん、どない(どうですか)。どこまで行かはるの(行かれるのですか)」
 隣にいる人が、コホンと咳。すかさず「どない」と飴ちゃんを手渡し、話しかけます。3秒もあれば、知り合いに。飴ちゃんは、きっかけづくりのツールとして携帯するのです。
 ※大阪のおばちゃんは、飴を呼び捨てにしません。

「転んでも、ネタを掴んで起き上がりや」
 失敗もネタにし、「おもしろいやろ(おもしろいでしょう)」と笑いをとります。何でも笑いにしようとする一面はありますが、笑いは気配りでもあります。心が重くなる話にも笑いを入れ、相手の負担を軽くしようと努めるのです。

「まっすぐガァー、右にビューン、トンしたとこ」
 外国人観光客にも、ツカツカと近寄り、身振り手振りを交えた擬音語で堂々と道案内。「なんとかなる」のポジティブ精神が、言葉を超えるコミュニケーションを可能にします。

「ウソッ!!」「いいや、ホンマ、ホンマ」
 相手の気持ちになり、言葉に感情を込めます。「ウソッ」も語尾を上げれば、否定ではなく感嘆の表現。その表情に相手は気分が乗り、「ホンマ、ホンマ」と話をつなげていけるのです。

叱る、褒める、めりはり上手なおばちゃん

足して2で割る考えよりも、イエスかノーかをはっきりさせます。「ダメなものはダメ」「ウチはウチ、ヨソはヨソ」などズバッと言いますが、言葉にカーブをかける叱り方もします。玄関を開けっ放しの子に、「誰か来(く)んの?」。ポイ捨てをする大人には、「落としはりましたよ」。やんわりとした言い方で、自発的な行動を促します。
 褒めるときは、直球で。それも、決まり文句の褒め言葉ではなく、「傑作や」などの表現で相手の心を躍らせます。
 「その気持ちがアカンのや(ダメなのよ)」と叱りつつ、底力があると褒め、「やってみぃ、期待してる」と背中を押すことも。

「べっぴん(美人)さんは、自転車を降りて押さはる」
 自転車禁止の商店街。でも徹底できず。そこへおばちゃんが、笑いを入れて「べっぴんさん」の一語でダメを押します。ただ「禁止」と言うよりも効果あり。機転の勝利です。

「口の肥えたあんたにも、きっと満足してもらえる」
 手みやげも褒める。「お口に合うかどうか」よりも、「近所で評判。きっとあんたも気に入る」のほうが、食べてみたくなります。気持ちは、引くよりも踏み込む。こうして思いを伝えます。

「ハデやなあ」「あんたには、負けるけどな」
 褒め言葉に、「とんでもない」と返したのでは心がしぼむ。おばちゃんは、褒めた人のセンスを褒め返し、笑いを含む褒め言葉には、「あんたには負ける」と切り返して喜び合います。

「悪いこと言ったのは、どの口や(どの口かな)、この口か(この口かな)」
 子どもを追いつめず、「どの口や」など、逃げ道を作った叱り方で考えさせます。そして、「口は何のためについてるの?」と、反省の言葉を導き出すのです。言葉に体温が感じられませんか。

(出典:「PHPスペシャル」2015年6月号)


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