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公開日:2021.02.25

FrontRunner with ICT ~ICTで変わる未来~ 野球編 元東京ヤクルトスワローズ監督 真中満氏

FrontRunner with ICT ~ICTで変わる未来~ 野球編 元東京ヤクルトスワローズ監督 真中満氏

人やモノ、場所などをデータでつなぐ情報通信技術「ICT」。IoTや5G、AI、自動運転といった技術革新が進む中で、私たちの生活は今後どのように変化していくのでしょうか?この企画では、業界のフロントランナーをお招きし、その分野で「これから訪れるであろう未来」についてお話しいただきます。

今回のテーマは「野球×ICT」。東京ヤクルトスワローズを監督として優勝に導き、現在は解説者やeBASEBALLプロリーグ応援監督を務められる真中満氏に話をうかがいました。

元東京ヤクルトスワローズ監督 真中満氏

PROFILE

元東京ヤクルトスワローズ監督 真中満氏
元東京ヤクルトスワローズ監督、解説者、eBASEBALLプロリーグ応援監督。1992年ドラフト3位でヤクルト入り。1999年に打率3割を達成。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献。2007年にはシーズン代打起用回数98回、代打安打31(ともに日本記録)で「代打の神様」と称された。2009年からヤクルト二軍打撃コーチ就任。2011年から二軍監督代行~監督に就任し、2013年イースタンリーグ優勝。2015年にはヤクルト一軍監督に就任し、同年、大接戦のセリーグペナントを制し、初年度優勝を成し遂げた。この年のセ・リーグの最優秀監督賞を受賞。2017年辞任。2019年より初代eBASEBALLプロリーグ応援監督に就任。
インスタグラム @mitsuru_manaka

スワローズ一筋。選手としても監督しても優勝を経験

選手としても監督しても優勝を経験した真中満氏

――真中さんは何歳から野球を始め、いつからプロ野球を目指されたのでしょうか?

クラブに所属し、本格的に野球を始めたのは小学校4年生の頃です。小学校の卒業文集に「プロ野球選手になりたい!」と書いてはいましたが、高校生になって春夏連続で甲子園に出場したときでさえ、「まだまだプロには手が届かない」と思っていましたね。正直、もう高校で野球を辞めようとも考えていたのですが、周りのメンバーが優秀でプロに行ったり大学に進学したりしていたので、「自分も続けてみよう」と日本大学の野球部に入りました。

――では、大学生になってから一気に実力が付いてプロの世界が近づいたんですか?

1年生のときから試合に出させてもらっていましたが、上級生にも絶対に負けたくないと練習に励んでいました。2年生や3年生になると全日本の合宿に選ばれたりして、少しずつ実力が付いていったのだと思います。また、リーグで対戦する相手チームの4年生ピッチャーはドラフトで上位指名されていましたので、「そういった選手たちと勝負ができている」ということもプロで通用するかどうかの指標になり、自信が芽生えていきました。

プロ野球で通用する自信が芽生えたと話す真中満氏

ただ、プロの世界は想像以上に厳しかった。ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団したのですが、1年目の春季キャンプではそのレベルの高さに圧倒されました。当時のヤクルトは常勝チームで、外野のレギュラーは固定。控えの選手層も厚く、これは相当がんばらないといけないなと感じました。入団から5年目にして、ようやくチャンスをつかめましたが、振り返ると紙一重でした。そのタイミングで結果を出せていなかったら、16年間も現役生活を続けられなかったと思います。

――現役時代で最も印象に残っている試合はなんですか?

やはり優勝を決めたときの試合ですね。現役中はリーグ優勝と日本一を4回(93年・95年・97年・01年)経験していますが、特に自分が活躍したうえでチームが長いペナントレースを制覇したときの解放感や達成感は鮮明に覚えています。

ペナントレース制覇時の達成感を思い起こす真中満氏

――2015年に監督に就任された際、優勝の喜びを選手たちに味あわせてあげたいと仰っていたのが印象的でした。

監督を引き受けた2015年、生え抜きの選手では石川雅規が最年長でしたが、彼ですら2002年入団ですので、優勝経験がありませんでした。ずっとチームを引っ張ってきてくれた石川をはじめ、選手たちに優勝の喜びを知ってもらいたい思いは強かったですね。ですので、監督時代においても優勝を決めた試合が最も印象に残っています。ペナントレース終盤、大混戦の中で本拠地最終戦の延長戦で勝ったシーンを思い出すと、感動的で今も胸が熱くなります。3年間の監督生活は、勝っていても負けていても苦しかったですが、とても良い経験になりました。

プロ野球とは異なる緻密な采配と戦術。eBASEBALLの醍醐味

eBASEBALLの醍醐味について話す真中満氏

――監督を退任され、2019年より初代eBASEBALLプロリーグ応援監督に就任されています。

ずっと野球をやってきた身なので、最初にeBASEBALLの存在を聞いたときは「ゲームにプロがあるの?」と懐疑的でしたが、本物のプロ野球さながらで驚きました。ドラフトをはじめ、ペナントレースや日本シリーズなど非常に本格的なんです。大会に参加するまでの過程は険しく、プレイヤーたちの努力は自分たちが甲子園やプロを目指して費やしてきたものと遜色ありません。緊張感に包まれたプレイヤーたちの真剣な表情や仲間とのチームワークを現場で目にすると、十分にプロスポーツと言えます。「汗をかきながら身体がヘトヘトになっていないとスポーツではない」というのは違いますよね。eBASEBALLのプレイヤーたちは、手先の感覚に優れたプロフェッショナルです。

eBASEBALLのプレイヤーについて話す真中満氏

――真中さんからご覧になって、eBASEBALLの醍醐味はどのようなところに感じますか?

実際のプロ野球とは違う、eBASEBALLならではの采配や戦術でしょうか。5イニング制なので、1番からホームランバッターを並べる打順の組み方は興味深いですね。ゲームを解説していると、プロ野球の試合でも良いバッターから順に上位に置くのもアリなのではないかという気がしてきました(笑)。

あとは、各選手に備わっている「特殊能力」に配慮して、打順を組んだり投手交代をしたりするのも特徴です。例えば、ビハインドの場面で特殊能力「勝ち運」を持っている投手を登板させて、次の攻撃で自陣の打撃能力をアップさせるといった具合。采配や戦術はよく考えられていて、プロ野球より緻密に感じています。当然ですが、プレイヤーが操作する選手たちには感情がありません。そのため、実際の野球と違って4番に代打を送ろうが、エースを1イニングで降板させようが、チームの雰囲気が悪くなることがない(笑)。こういったeBASEBALLならではの特性が、ゲームの展開をスリリングにさせているんだと思います。

eBASEBALLの特性について話す真中満氏

――eBASEBALLの今後が楽しみですね。

競技人口は増えてきていますし、NPB(日本野球機構)もeBASEBALLを応援してくれていて、プレイヤーたちは各球団に所属して大会に臨んでいます。ただ、もっと認知が広がってほしいですね。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で無観客開催となり残念でしたが、いずれは大々的なイベントを開催できればと思います。スタジアムのオーロラビジョンで中継したり、現役のプロ野球選手とeBASEBALLのプレイヤーがファン感謝祭で交流したりするのが理想です。盛り上げていきたいですね。

ICTでデータ収集がスピーディーかつ簡易に。情報の精度は格段に向上

ICTで野球のデータ収集がスピーディーかつ簡易になったと話す真中満氏

――eBASEBALLに象徴されていますが、ICTの進化は野球界にも影響を与えていると思います。実際、どのような変化が起きていますか?

まず、データ収集がよりスピーディーかつ簡易になっています。一昔前は自分のバッティングフォームをチェックするにもスコアラーを呼んでビデオを再生してもらわないといけませんでしたが、今ではスマホやタブレットに送ってもらえれば、その場ですぐに確認して研究できますから。球団によっては、全選手にさまざまなデータを配信しているところもあるようです。また、トラックマン(弾道測定機器)によって打球の角度やボールの回転数を計測できるようになるなど、収集できるデータの精度が格段に上がっています。

しかし一方で、豊富に集まる細分化されたデータを試合でどこまで有効活用できるかは未知数です。それらはあくまで参考として、現場の選手たちや首脳陣はデータに囚われすぎず、感覚や経験に基づいた勘も大事にしてほしいと思います。

データに囚われすぎず、感覚や経験に基づいた勘も大事にしてほしいと話す真中満氏

――確かにどんな情報も取得しやすくなって便利になりました。

僕らがアマチュアだった頃は身近にいる監督やコーチに打ち方や投げ方を教えてもらうしかありませんでしたが、今の子どもたちはプロ野球選手やプロ野球OBのYouTubeチャンネルやSNSを通して、彼らの理論を練習に取り入れられるようになっていますよね。恵まれている環境と感じる分、指導者はプロやOBと比べられたりして指導するのが大変になっているのかもしれません。理屈っぽくなるのではなく、子どもたちには情報を冷静に活かしてもらいたいですね。

生身の人間が行う魅力は維持しつつ、必要な部分をICTの力で効率化

ICTでプロ野球はどう変化するかを予測する真中満氏

――ICTの進歩に伴い、プロ野球はどのように変わっていくと思われますか?

近年、コリジョンルール(本塁での衝突を防止するための規則)やリプレイ検証(ビデオ判定)が導入されるなど、時代とともにプロ野球は変わってきています。例えば、リプレイ検証について僕は賛成の立場ですが、球場によって映像が異なっていて、きちんとした角度から検証するのが難しいといった課題があります。せっかくリプレイ検証をするならカメラをしっかり配置して、それこそICTを活用しながら、アメリカのメジャーのように審判以外の第三者が映像で判定する方法も検討すべきでしょう。

とはいえ、だからと言ってストライクとボールの判定までリプレイ検証するのは今の時点では現実的ではないように思います。審判の判定のクセを読み合うのも野球のおもしろさではありますので、生身の人間が行うスポーツの魅力は維持しつつ、必要な部分はICTの力で効率化していくのが良いのではないでしょうか。

必要な部分はICTで効率化するのが良いと話す真中満氏

――最後に、真中さんは今後どのように野球に携わっていきたいですか?

それこそ今はテレビのプロ野球中継の画面にはいろんなデータが表示されますが、僕自身はシンプルに野球を観て、野球そのものの楽しさを伝えたいと考えています。数字ではわからない特徴や個性を紹介してあげれば、まだ知らない選手にも興味が湧いて、野球を観るのがさらに楽しくなると思いますので。

評論というとミスや欠点を批判する風潮がありますが、プロ野球でもeBASEBALLでも、なるべく選手やプレイヤーたちの良いところをたくさん取り上げて伝えていきたいですね。

プロ野球とeBASEBALLの魅力を今後も伝えていきたいと話す真中満氏

真中さんがプロ野球の世界に入ったときの監督が野村克也さんでした。ID野球を標榜し、データを重視するイメージが浸透していましたが、グラウンドでは自分の感覚を信じてプレーするように教えられていたと振り返ります。「データは、あくまでデータ」。どのように活用するかは個人次第であるため、その判断能力がますます求められることになりそうです。得られる情報が増え、その精度が向上していくのは間違いありませんが、人々を魅了する野球の本質はこれからも変わらないのかもしれません。

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チエネッタ編集部

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