チエネッタ

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公開日:2018.05.29

連載子育てデジタルシフトを考える

vol.06

子どもたちはLINEとTwitterをどう使う?(後編)

写真:子どもたちはLINEとTwitterをどう使う?

子ども同士で何を話しているんだろう......。トラブルに巻き込まれていないかしら......。親としては気がかりな、子どもたちのオンラインコミュニケーション。

前編では、子どもたちのLINEやTwitterの使い方、LINEいじめの実態や相談先などについて伺いました。後編では子どもへどうやってネットリテラシーを教えていくのか、さらに子どもにバレずに見守る秘密のテクニックまで、ITジャーナリストの高橋暁子さんからお聞きした実践的なアドバイスをご紹介します。

(話し手)高橋暁子さんプロフィール

画像:高橋暁子さん

ITジャーナリスト。
元小学校教員。Web編集者を経て独立。書籍、雑誌、WebメディアでSNSや情報リテラシー教育にまつわる記事を執筆し、SNSの安心安全な使い方(LINEいじめ、LINE依存、Twitter炎上、Facebookの個人情報漏洩、ソーシャルゲームの課金問題、出会い系被害の対策)等をテーマとしたテレビ、雑誌、新聞、ラジオ等メディア出演多数。著書に『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)等。小学三年生の子どもを持つ一児のママ。

(聞き手)紫原明子さんプロフィール

画像:紫原明子さん

エッセイスト。
ブログ「手の中で膨らむ」が話題となり執筆活動を本格化し、『cakes』『SOLO』『WEB DRESS』など連載多数。「ウーマンエキサイト」では、「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」を発案し、「赤ちゃんが泣いても嫌じゃないよ!」と意思表示するステッカーを作成。著書に『家族無計画』(朝日出版社)、『りこんのこども』(マガジンハウス)等。高校二年生と中学一年生の子どもを持つシングルマザー。

「インターネットにまったく触れさせない」のはかえって危険かも?

写真:「インターネットにまったく触れさせない」のはかえって危険かも?
紫原明子さん

私自身が中学生のときからインターネットを使っているということもあって、わが家は比較的子どものネット利用に寛容なスタンスをとってきました。でもご家庭によっては保守的なところもありますよね。

高橋暁子さん

たしかにリスクは色々とあります。けれど、だからといって子どもにネットを一切触らせないというのは決しておすすめできません。なぜかというと、今やスマホを持たせなくとも、タブレットやゲーム機、使われなくなったお古のスマホなど、家の中にあるさまざまな端末がインターネットに接続できます。子どもたちは賢いので、どんなに禁止しても、親の知らない間にフリーWi-Fiスポット等でネットに接続し、SNSを利用するという可能性が十分考えられます。そうした場合にもし、何らかのトラブルが起きたとしても、親の目を盗んでネットを使う子どもたちは、気軽に親に相談することができませんよね。

紫原明子さん

なるほど。それでは危険ですね。

写真:遅かれ早かれインターネットを使わなければなりません
高橋暁子さん

そうなんです。また今の時代、生きていく上では誰もが皆、遅かれ早かれインターネットを使わなければなりません。であればこそ、親や先生など、大人の目の届くうちに、正しいインターネットの使い方を学んでおくということが大切だと思うんです。

どう教える?子どものネットリテラシー

紫原明子さん

実際のところ、学校では、子どもたちのネット利用についてどの程度教育が行われているんでしょうか?

高橋暁子さん

現在、LINEやDeNAなどの大手IT企業の方が全国の学校を回り、子どもたちにインターネットコミュニケーションの授業を行っています。授業内容もとてもよく練られているのですが、頻繁にあるわけではありません。一方で、インターネットの使い方やルール、マナーなどを教える授業のレベルは学校や先生によって大きな差がありますし、先生ご自身があまりスマホを使っていないから分からないという話もよく聞きます。

紫原明子さん

ということはやはり、親が率先して指導していかなくてはいけないんですね。必要性は十分理解しているものの、何をどう教えていけばいいのか見当もつかないという親御さんも、少なくないのではないでしょうか。

高橋暁子さん

実はそんな親御さんのために、とても良いものがあるんです。こちらです。

<詳細:オンラインコミュニケーション能力のモデル>

写真:オンラインコミュニケーション能力のモデル
高橋暁子さん

これは、"子どもたちのインターネット利用について考える研究会"という組織が作っている、オンラインコミュニケーション能力のモデルです。ご覧の通り、段階に応じて、その時期に適した使い方が提示されているんです。

紫原明子さん

......ステップ1、インターネット利用開始時にはサイト閲覧のみ、というのは、私たちネット古参がよく使っていた"3年ROMってろ"というあれですね!

※ネット古参とは日本のインターネットの始まりの頃から参加し発言している人の意。
※ROMとは「Read Only Member=閲覧だけしているユーザー」の意。掲示板などネットのコミュニティーにおいて、初心者は安易に書き込みせず、しばらく読むだけにしてその場の空気をつかむことを推奨する意味合いで使われる。

高橋暁子さん

大体そうです!

紫原明子さん

なるほど。これがあれば、安全とリスクのバランスをとりながら、子どもたちに上手にネットの使い方を指導していけるような気がします。

高橋暁子さん

そうなんです。ぜひお子さんが「スマホデビュー」するときに活用してみてください。これに加えて、子どもの安全なネット利用のために、学校の先生たちの多くが、子どもたちに内緒で行っていることがあるんです......。

子どもの人間関係をこっそり見守るテクニック

写真:子どもの人間関係をこっそり見守るテクニック
高橋暁子さん

紫原さん。LINEには、チャット機能のほかに、タイムラインという機能があるのをご存知ですか?

紫原明子さん

そういえばそんな機能もあったような......。

高橋暁子さん

誰に聞かせるわけでもない独り言をつぶやける、Twitterのような機能ですね。私たち大人はあまり使いませんが、実はこのLINEのタイムライン機能を、子どもたちはとてもよく利用しているんです。

紫原明子さん

あ、ほんとだ。今久しぶりに見ましたが、うちの娘も沢山投稿していました。

高橋暁子さん

でしょう? 実は、一部の熱心な先生たちは、生徒とLINEで繋がってタイムラインをよく見ているそうです。お子さんのネット利用が心配な親御さんは、ぜひここをまめにチェックしてみてください。

写真:お子さんのネット利用が心配な親御さんは、ぜひここをまめにチェックしてみてください。
紫原明子さん

それはどうしてですか?

高橋暁子さん

ここでは、一見子どもの一方的な投稿しか見られないように思いますが、実はそのコメント欄に、お友達からのコメントがつきます。この投稿+コメントのやり取りで、子どもが誰と仲が良いか、悪いかなど、子どもの人間関係がある程度把握できるんです。

紫原明子さん

なるほど! ここはLINEで繋がっていれば誰でも見ることができるんですか?

高橋暁子さん

いいえ。たとえLINEで繋がっていても、ブロックされると見ることができなくなります。ただ、初期設定では全員に見えるようになっています。ですから、もし投稿を見て、何か気になることがあっても、決して親から子どもに「タイムラインで見たんだけど......」と言ってはいけません。

写真:お子さんのネット利用が心配な親御さんは、ぜひここをまめにチェックしてみてください。
紫原明子さん

なるほど、分かりました! 親が見ているということが子どもにバレると、ブロックされ、見えなくされる可能性があるからですね?

高橋暁子さん

その通りです!

紫原明子さん

でも、気がかりなことを本人に伝えないわけにもいきませんよね?

高橋暁子さん

ええ。ですからその際には、「よその親御さんから聞いたんだけど......」と、よそのお父さん、お母さんに情報源として登場してもらうんです。これはまさに学校の先生たちも使っているテクニックで、先生たちはタイムラインを見て気がかりなことを注意するときも、どこからともなく小耳に挟んだことにして、タイムラインを見たとは決して言わないそうです。加えて言うと、学校の先生たちは、子どもたちのTwitterのアカウントもこっそり把握していたりするんですよ。

紫原明子さん

え、どうやってそんなことができるんですか?

高橋暁子さん

何しろ、子どもたちが◯高△年、と詳細に情報を載せてくれていますから。子どもたち同士が入学前に友達になれるように、先生たちも、入学前にTwitter経由で、生徒の情報を入手できるんです。

紫原明子さん

言われてみればそうですね。......ん? ということは、私たち親にも、同じことができる?

高橋暁子さん

そうなんです。学校名や学年でTwitter検索をしてみると、お子さんか、そうでなくてもお子さんのクラスメートが見つかるかもしれません。その際、ツイートの内容等から芋づる式にたどっていけば、お子さんのアカウントが見つかる可能性が少なからずあります。

紫原明子さん

なるほど、考えてもみませんでした。

高橋暁子さん

この方法でもしお子さんのアカウントを見つけたとしても、やっぱりお子さんには極力知らせず、あくまでも影から、トラブルに巻き込まれていないかどうか、そっと様子を見守りましょう。そうでなければ、見えないようにアカウントをブロックされたり、アカウントを変えられたり、あるいは投稿自体を非公開にされてしまいます。

紫原明子さん

そして気になることがあればやはり"よその親御さんから聞いた"という体裁で、それとなく釘を刺すんですね?

高橋暁子さん

そうです。これに限らず、親御さん同士で互助会的に繋がるというのはとても良い方法です。たとえば、最初の方で紫原さんがお話された、子どもたちの「LINEチャットが終わらない問題」も、お子さん一人に"◯時まで"と時間制限をつけたところで、子どもにすれば会話の途中で自分だけが離席するのは後ろ髪が引かれますよね。そこで、クラスの親御さんたちと"LINEチャットは◯時までにしよう"とあらかじめ連帯して決まりを作るんです。そうすると、決まった時間に、みんなで一斉にやめることができます。

インターネットは人間関係の延長線上にある

写真:インターネットは人間関係の延長線上にある
紫原明子さん

具体的なテクニックをいくつも教えていただき、とても勉強になりました。

高橋暁子さん

良かったです。基本的に、インターネットコミュニケーションというのはリアルな人間関係の延長線上にあるものです。LINEいじめがなぜ起きるかといえば、リアルの人間関係にトラブルやいじめがあるから。ですから、万が一自分の子どもがLINEいじめの被害に遭ってしまった場合にも、まずは慌てず、スクリーンショットなどで会話を保存し、それを持って学校に相談に行きましょう。リアルの人間関係そのものを修復しなければ、LINEいじめだって解決しません。

紫原明子さん

自分の子どもが実際にいじめられていたら、「早く抜けなさい」って慌ててグループを抜けて終わりにしちゃいそうですが、証拠はちゃんととっておいて根本からいじめを解消しないといけないんですね。

高橋暁子さん

まず根本的にいじめた方の写真や画像を消させるとか、そういうところをやっていった方が本当はいいんです。相手の親御さんも証拠が出てきてしまったら、"いじめっ子の親"でいたいとは思わないはずなので、話し合ったりして解決できると思うんですけどね。

紫原明子さん

そういう意味では、発言者や発言内容など、ログが残るネット上のコミュニケーションは、対面の会話よりも第三者の客観的な視点を取り入れやすいという利点がありますね。

高橋暁子さん

そうなんです。ですから、繰り返しになりますが、私たち親の側も、インターネットコミュニケーションを必要以上に恐れず、むしろ特有の利点を理解し、活かしながら、子どもたちとともに上手に使っていきたいものですね。

写真:インターネットコミュニケーションを必要以上に恐れず、むしろ特有の利点を理解し、活かしながら、子どもたちとともに上手に使っていきたいものですね。

高橋さんによると、「LINEのグループチャットがいつまでも終わらない」などの問題は、実は保護者間でもよく発生するトラブルだそう。

固定電話の時代には"深夜の電話はマナー違反"など、暗黙の了解がありましたが、登場して日が浅いインターネットのコミュニケーションツールには、まだルールが完全には整備されていません。

ある調査によると、子どものネット利用時間の増加に伴い一番減るのは睡眠時間、次が学習時間だとか。便利で楽しいインターネットコミュニケーションが、子どもの健やかな心身を害することのないよう、私たち大人が率先して、規範となるような使い方を示していかなければいけないなと感じました。

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チエネッタ編集部

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