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審査22-956-1
公開日:2021.03.31
2020年4月から小学校で必修化されたプログラミング教育。「どうして子どもがコンピュータの仕組みを学ぶの?」と、疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、9歳でプログラミングをはじめ、15歳で起業に至った山内奏人さんに、プログラミングで身につく「力」についてお聞きしました。
PROFILE
山内奏人
2001年 東京生まれ。6歳でパソコンに出会い、9歳からプログラミングをはじめる。2012年「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞。2016年、15歳でウォルト株式会社(現WED)を創業。2018年Forbes 30 Under 30 Asia 2018に二部門選出される。また、レシート買取アプリ「ONE(ワン)」のリリースも大きな話題となり、現在も事業を継続している。
――はじめにパソコンとの出会いについて教えてください。
家でいらなくなったパソコンを譲り受けたのがきっかけですね。6歳くらいの頃は本が好きで、図書館によく通っていたんです。そんな時、本に出てきたゲームクリエイターに惹かれ、自分でもパソコンで何かやってみたくなりました。
最初は文書を書いたり、おこづかい帳をつけたり、アニメーションをつくったり......できることから順にやっていたんです。すると、本棚にある本を読み切っちゃうような感じで、やることが無くなってきました。それでプログラミングをはじめたのが、9歳くらいの頃ですね。
――実際にプログラミングをやってみて、どうでしたか?
やっぱり難しいし、あんまりうまくできなかったですね。そういう時は、やらないで休んでいました(笑)。それで小説を読んだり、好きな昆虫を育てたり、いろんなことをして脳を休めて「やりたくなったらやる」っていう感じでしたね。
でも、その頃から組んだプログラムの「どこがダメだったのか」を見つけて、直していくっていう過程は楽しんでいましたよ。やっぱり、わからないことがわかるのは楽しいです。家にいる時間はずっとプログラミングなんて日もよくあって、次第にメール配信や暗号化に関するプログラムを組むようになっていきました。
――プログラミングを学んで得られたものはありますか?
そうですね......今の仕事につながる人、コミュニティに出会えました。11歳の時にプログラミングのコンテストで賞をいただけたのが大きかったです。それが、自分にも「得意」があるという自信になりましたね。
あとは、試行錯誤する力や諦めない力......でも、どうしてもできない時には諦める。そういうバランス感覚は、プログラミングで得たものかもしれません。コンコルドの誤謬(ごびゅう)※にならないよう、コストを考えながら同時に進行もするという部分は、プログラミングと会社経営の共通点かもしれないですね。
※ある対象に投資を続けると損失につながると理解しているのに、それまでの投資を惜しんで、投資をやめられない状態。
――会社経営の話題が出ましたが、15歳での起業にはどのような経緯があったのでしょうか?
僕としては、両親も経営者とかではありませんし、起業したいという想いもありませんでした。じつは、11歳でいただいたプログラミングの賞をきっかけに、シェアオフィスを使わせていただけることになったんです。そこで人とのつながりができ、商業用のプログラミングに挑戦する機会を得ました。
そのうち、自分でつくったサービスが伸びてきて「そろそろ会社があった方がいいんじゃないか?」となってつくったのが、今の会社です。
――プログラミングをきっかけに起業に至った山内さんですが、小学校のプログラミング必修化については、どのように考えていますか?
じつはプログラミング必修化については、文部科学省の議論にも参加させていただいたんです。僕はプログラムを学んでITエンジニアをめざすというよりは、これからITエンジニアと仕事をする際に「彼らが何をしているのか」を理解しておく必要があると思っています。
義務教育は、その後の生活に困らないように学ぶというのが大前提です。そして、これからの世の中は、テクノロジーに触れずに生きていくことは不可能に近いですよね?なので「プログラミングの授業でコンピュータに触れておきましょう」くらいの認識でも良いと思います。プログラミングが未知のものではなくなるというのが重要ですね。
――子どもたちがプログラミングを学ぶのが当たり前になると、世の中はどのように変わっていくと思いますか?
正直なところ、実感としてはそんなに変わらないと思います。でも、もしプログラミングを必修化しなかったら、世界から取り残されていくし、社会に出て右も左もわからない人たちが増えてしまう。そうならないように必修化しただけだと僕は考えています。
プログラミングの授業って、技術・家庭や美術と同じような科目だと思うんですよ。技術・家庭の時間に椅子のつくり方を学んだように、プログラミングも学んでおく。それくらい気軽に構えていいと思います。ただし、授業でやるのと仕事としてやるのは別、というのは理解しておいたほうがいいかも知れません。
日曜大工でつくった椅子と、売り物の椅子はぜんぜんクオリティが違うもの。でも、椅子のつくり方を知っていれば、売り物の椅子の価値や、つくる大変さは理解できる。プログラミングが必修化されたというのは、そういうことだと思います。
――親世代としては、自分が学んでいなかったからこそ、戸惑っている方も多いと思います。ご両親は特にプログラミングに詳しくはないそうですが、山内さんに対してはどのような親御さんでしたか?
ピアノを頑張っている子を応援する親とかと同じだったと思いますよ。例えばプログラミングではなく、僕がサッカーに夢中だったとしても、同じように応援してくれていたと思います。僕の場合は、たまたまプログラミングだっただけで、両親は「好きならやってみればいいんじゃない?」と応援してくれた。
もちろん、プログラミングで遅くまでパソコンに向かっていると「早く寝なさい」「勉強しなさい」「宿題しなさい」とか、ごく普通に怒られていましたけどね(笑)。でも、夢中になっていることを「やめなさい」とは言われなかったですね。
――親世代はプログラミングに限らず、子どもたちが夢中になったことを応援してあげるのが大切なのかもしれませんね。本日はありがとうございました。
***
パソコンやスマホといったテクノロジーが当たり前に存在する世の中では、それらを支えるプログラミングも当たり前の存在。プログラミング学習は特別なものではなく、技術・家庭や美術を学ぶのと根本的には変わらない。大切なのは夢中になれることとの出会いと、それを続けられる環境なのかもしれません。
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