リモートワーク、オンラインゲーム、スマートフォンのWi-Fiなど日々の仕事や暮らしで安定して高速な光回線が求められています。
光回線を選ぶなら、「NTT西日本品質」という選択を。
審査22-956-1
公開日:2020.03.27
人やモノ、場所などをデータでつなぐ情報通信技術「ICT」。IoTや5G、AI、自動運転といった技術革新が進む中で、私たちの生活は今後どのように変化していくのでしょうか?この企画では、業界のフロントランナーをお招きし、その分野で「これから訪れるであろう未来」についてお話しいただきます。
今回のテーマは「農業×ICT」。ベンチャーキャピタリストから転身し、農業ベンチャーを創業した、ベジタリア株式会社 代表取締役社長の小池聡氏に話をうかがいました。
PROFILE
ベジタリア株式会社 代表取締役社長 小池 聡 氏
iSi電通アメリカ副社長を経てNetyear Groupを創業。1990年代は米国でベンチャーキャピタリストとして活動。社会人向けマネジメントスクール東京大学EMP修了後の2009年に食と農業に関心を持ち就農。2010年ベジタリア(株)を設立。文部科学省「革新的イノベーション創造プログラム(COI)」ビジョナリーリーダー。文部科学省「卓越大学院プログラム」委員。経済産業省「グローバル・ネットワーク協議会」グローバルコーディネーター。東京商工会議所(渋谷)副会長。(公社)ベトナム協会理事。(公財)日本ユースリーダー協会監事。
――小池さんは、まだインターネットが世の中に普及していない黎明期からITに携わっていたそうですね?
大学を卒業し、電通とGE(General Electric Company)の合弁会社に入社した私は、90年代前半にアメリカ・ニューヨークに駐在員として赴任する機会に恵まれました。当時は、IT産業が隆盛を極める前夜。1993年に副大統領だったアル・ゴア氏が、アメリカ全土のコンピューターを高速通信回線で結ぶ「情報スーパーハイウェイ構想」を提唱したことで、それまで軍事・研究用だったインターネットが民間に開放され、商用化の流れが加速しました。この動きをビジネスチャンスと見た私はインターネット事業部を創設し、ネットビジネス開発と現地のスタートアップ企業に投資・インキュベーション(事業創出支援)する仕事を始めることにしたのです。
その後、MBO(マネジメント・バイアウト)※1で独立し、日本にもアメリカのシリコンバレーのようなITのメッカを作りたいとの考えから「ビットバレー構想」を打ち立て、日本国内のスタートアップ企業への投資やコンサルティング、上場支援に精力的に取り組むようになりました。
※1 M&Aの手法のひとつで、会社の経営陣が金融支援を受けることによって、自ら自社の株式や一事業部門を買収し、会社から独立する手法のこと。
――まさに"日本のIT業界の立役者"とも呼ぶべきご経歴ですが、どうして農業という異分野に挑戦することになったのでしょうか?
特に90年代のシリコンバレー時代、キャピタリストとして投資する対象は、これから世界がダイナミックに変わっていくような夢のあるアイデアばかりでした。ですが、インターネット・バブルがはじけたあたりから、ワクワクすることが少なくなってきたのです。そうして、50歳を迎えた頃、人生100年時代と捉えたとき、残りの50年は地に足を着けて社会に貢献できるライフワークに捧げようと考えるようになりました。
しかし、なかなかテーマが思い浮かばず(笑)。そんなときに、東京大学で社会人向けマネジメントスクールEMP(エグゼクティブ・マネジメント・プログラム) がスタートすることを知り、1期生として入学し、勉強してみることにしました。EMPでは「課題先進国である日本が培ってきた技術やノウハウは、これからの国際貢献や国際競争力につながる」との理念のもと、幅広いプログラムが展開されていました。その中で、興味を持ったのが「健康」「食」「農業」「環境」でした。中でも「農業」に強く惹かれたのです。
――異分野からの転身で、どんなことに苦労されましたか?
農業も、他の産業と同じく課題が山積みです。けれど、実際にやってみないことには本質をつかめないと考え、EMP卒業後に農業研修を受け、就農しました。無農薬・有機栽培をめざして農地を借り、土作りからチャレンジするも、農作物はほぼ全滅。「農業は、病気・虫・天候・雑草との戦い」といわれていますが、身を持って痛感しました。
――役立ったのがICTの力だったのでしょうか?
当初、農業にICTを活用しようとは思ってもいませんでした。むしろ、IT業界からは引退したつもりでいたので(笑)。ただ、EMPの担当教官のひとりが植物病理学の権威の先生で、その先生に農作物の被害を相談してみると、病気のメカニズムを詳しく教えてくれたのです。ならば、病気になりにくい環境を整えてあげれば、被害を防げるのではないかと考えました。けれどこの仮説に則り、ホームセンターで温度計や湿度計を買って管理してみるも、全く埒が明かない。
そこで、ITで管理・分析ができるツールがないか探したところ、「フィールドサーバ」という農業用センサーと出会いました。これは、温度や湿度、日射量、土壌水分といったデータをクラウド上で管理・分析でき、農場(現場)のモニタリングもできるという製品。さっそく導入し、制御と観測を行っていくと、段々と被害が少なくなり、収穫量も増大していきした。
そうして満足のいく品質の野菜ができるようになると、それを売るために都内のマルシェで販売をスタート。これが好評で、その後、八百屋「ベジタリア」を作り、イタリアンレストランも併設しました。八百屋には大型ディスプレイを設置し、圃場(農作物を育てる場所)の様子やデータを表示して安全性をアピールしました。(なお、代官山店舗は現在は閉店)
――ICTによって農業はどのように変わっていくのでしょうか?
これまでの農業は「経験・勘・匠の技」が物を言うとされてきましたが、これからは、科学とテクノロジーの導入によって、農作物を誰でも効率的に作れるようになるでしょう。それは、IoTセンサーなどから温度や日射量といった生育に必要な数値をビッグデータ化し、AIなどによって最適な栽培アルゴリズムを導き出すことで、農作物にとっての理想的な環境を見える化できるからです。「トマトは水を絞ると甘くなる」といわれていますが、その科学的根拠を理解しておくだけでも栽培の精度は高まるでしょう。
また、病気の予防・診断もできるようになってきました。先ほども申し上げたように、農家を苦しめている農作物の病気の多くはメカニズムが解明されているのですが、それらの研究結果は社会に伝わっていません。例えば「根こぶ病※2」は土壌の遺伝子検査によって発病ポテンシャルを診断できますし、対策が難しかった「センチュウ(線虫)※3」においても多種を同時に判別できる技術が確立されています。早期発見・早期対処により、農作物の損失はかなり抑えられるはずです。
※2 野菜を中心とするアブラナ科植物(カブ、キャベツ、コマツナ、ブロッコリーなど)に発生する病気で、感染した根は細胞が異常に増殖し、大小さまざまなこぶができます。生育が徐々に悪くなり、ひどい場合は枯れることも。
※3 土の中に生育する虫で、野菜の根に寄生して養分を吸うことで、野菜の生育を阻害します。
さらに、こうした環境センシング以外にも、農作物の樹液流という生体情報を測定することで健康状態や光合成量を把握し、例えば、水ストレスをコントロールすることで醸造に適した糖度の高いワイン用ブドウも作ることもできるようになります。政府も提言するスマート農業が進めば、膨大な消費データを解析したマーケットニーズに合致する農作物を作る「スマートフードチェーン農業」が、いずれ実現するでしょう。
――今後の展望を教えてください。
現在、全世界の農業生産可能量の約3分の1が病虫害や雑草害で失われていますが、これは世界の飢餓人口に相当する年間約8億人分の食料に値します。そんな中、2050年までの30年間で世界の人口が20億人も増えると予測されており、食糧問題は深刻です。日本のみならず、世界中の人々が栄養価と機能性の高い安心・安全な農作物を作って食べられるように、今後も仮説と検証を繰り返し、国や地方自治体、他の企業とコラボレーションしながら、その成果を社会に還元していきたいと考えています。
――最後に、小池さんにとってICTとはどういったものでしょうか?
農業はICTと縁遠い産業であったため、担い手が高齢化してしまった今、ICTやITと言った途端、敬遠されることが多々あります。しかしICTは、電気・ガス・水道などのライフラインと同じように、あって当たり前のものです。"ある"ことが特別ではないため、必要以上に取り立てることもない。もう、そんな時期に来ているのではないでしょうか。
農業は保護されてきた産業でしたが、規制が緩和され始め、ようやくICTの利活用が進んできました。これまで頼りにしていたアナログな「経験・勘・匠の技」が見える化されることで、手作業、労働力不足、生産性・収益性、熟練度の参入障壁といった課題の解決につながっていくのではないでしょうか。最先端の産業として、これからの農業に期待がかかります。
リモートワーク、オンラインゲーム、スマートフォンのWi-Fiなど日々の仕事や暮らしで安定して高速な光回線が求められています。
光回線を選ぶなら、「NTT西日本品質」という選択を。
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