リモートワーク、オンラインゲーム、スマートフォンのWi-Fiなど日々の仕事や暮らしで安定して高速な光回線が求められています。
光回線を選ぶなら、「NTT西日本品質」という選択を。
審査22-956-1
公開日:2021.03.31
人やモノ、場所などをデータでつなぐ情報通信技術「ICT」。IoTや5G、AI、自動運転といった技術革新が進む中で、私たちの生活は今後どのように変化していくのでしょうか?この企画では、業界のフロントランナーをお招きし、その分野で「これから訪れるであろう未来」についてお話しいただきます。
今回のテーマは「漫画×ICT」。WEBメディアに多数の連載を持つ漫画家で、『左ききのエレン』の原作者でもあるかっぴー氏に話をうかがいました。
PROFILE
漫画家・漫画原作者 かっぴー氏
1985年神奈川生まれ。株式会社なつやすみ代表。武蔵野美術大学を卒業後、大手広告代理店のアートディレクターとして働くが、自分が天才ではないと気づき挫折。WEB制作会社のプランナーに転職後、趣味で描いた漫画「フェイスブックポリス」をnoteに掲載し大きな話題となる。2016年に漫画家として独立。自身の実体験を生かしてシリアスからギャグまで、様々な語り口で共感を呼ぶ漫画を量産している。現在、TVドラマ化もされた代表作「左ききのエレン」が『少年ジャンプ+』(集英社)で連載中。
Twitter @nora_ito
――かっぴーさんはネット発の漫画家として注目されましたが、そもそもどうして漫画家をめざそうと思われたのでしょうか?
子どもの頃から漫画を描くのが好きでしたが、漫画家になろうとは思ってはいませんでした。美大を卒業して広告代理店に就職し、その後、Web制作会社「面白法人カヤック」に転職したのですが、自己紹介を兼ねて描いた漫画が社内で話題になったことがきっかけです。先輩たちが「おもしろい!」と褒めてくれまして。
――その漫画が『フェイスブックポリス』ですね?
そうです。ただ、あくまで社内向けに描いていた作品なので、1年間は社外には未公開でした。1年越しにWebサイト「note」にアップしたのは、先輩たちのように課外活動を始めてみようと思ったからです。カヤックでは、アート作品を発表したりイベントを企画したりと、本業以外で名を馳せている有名なクリエイターさんがたくさんいましたから。自分としては『フェイスブックポリス』をネットで公開したのは "第0弾"といった程度の認識だったので、noteのURLをTwitterでツイートした日にいきなりバズったことにはとても驚きました。Twitterのフォロワー数も1,000人に満たないくらいでしたし。
――どうして一気にバズったのでしょう?
ネットでおもしろいものを見つけるのが得意な人たちにリツイートしてもらったことが大きかったですね。内容が"インターネットあるある"だったので、共感を生みやすかったのだと思います。
あと、当時のTwitterに「漫画」が少なかったこともあるかもしれません。Twitterの特性を生かした4スラ漫画(指でスライドして閲覧する4枚完結の漫画)が登場する少し前の時期でしたから。
――TwitterをはじめとするSNSが普及し、漫画家デビューの道のりは変わりましたか?
出版社への持ち込みが"オーディション"なら、SNSを活用するのは"スカウトを待つ"といった感じですね。僕はTwitterを"ストリート"だと思っていて、そこで人気が出たり評判になったりすれば出版社からスカウトされるのも夢ではありません。従来の方法に加えて選択肢が増えたのは良いことだと思います。
――かっぴーさんは『左ききのエレン』がネットメディア「cakes」の作品賞で最優秀賞に選ばれ、その後、「少年ジャンプ+」(集英社)でのリメイク版の連載の話が舞い込みますが、自身の漫画を広めるためにどのようにネットを活用していたのでしょうか?
まずcakesで連載を始めた頃は、作品や自分自身を知ってもらおうと積極的に活用していましたね。ネット発の漫画家は珍しく、成長の過程を楽しんでもらえている実感はありました。
けれど、少年ジャンプ+での連載が決まってプロの漫画家としてデビューしてしまうと、それ以上は成り上がれません。先ほどTwitterを"ストリート"と表現しましたが、いわゆる"SNSドリーム"のような熱狂はインディーズの特権だと思うんです。
『左ききのエレン』(C)かっぴー・nifuni/集英社
――では、徐々にネットとは距離を置くようになったのでしょうか?
SNSで話題になりやすい作品、例えば"ツッコミ系"や『フェイスブックポリス』のような"あるある系"の単発作品には自信があったものの「一生は続けられないな」と感じて、長編をじっくりと描くことに舵を切りました。どちらが良い悪いという話ではありませんが、同じ漫画でも競技が違うので、使う筋肉が異なります。Twitterウケを狙った単発作品は書かず、必要な筋肉を鍛えるためにも長編に集中することにしたんです。
そうすると、予想はしていましたが、反応は散々で(笑)。 "ツッコミ系"や"あるある系"の単発作品に比べてリツイート数が大幅に落ち込んだり、フォロワー数が激減したりしました。「ここに自分のファンはいない」と、やさぐれましたね(笑)。
でも、原作版『左ききのエレン』の第一部を再編集した紙の単行本を制作するプロジェクトが国内の漫画系クラウドファンディングで当時日本一になり、また心境の変化がありました。
――どのように変わったのですか?
インディーズ時代から応援してくれているTwitterが拠点の読者もいれば、少年ジャンプ+でデビューしてからの僕を知って『左ききのエレン』を読んでくれている人もいる。「ネット発の漫画家」と言われすぎるのが嫌だった時期もありますが、両方のファンに支えられて今のキャリアにつながっていると思えるようになりました。
また、以前とは空気が変わり、テレビとYouTubeのように漫画においてもネットと紙との垣根はフラットになってきました。ネットと紙のどちらか一方にこだわり過ぎず、自分が描きたいものを描いていきたいですね。
――「いいね」や「RT」といったSNSの反応に依存せず、長編漫画を描くという漫画家としての本質的な仕事に力を注いだからこそ今のかっぴーさんがあるんですね。
――かっぴーさんは電子コミックと紙の書籍とで作品を発表していますが、制作時に気をつけていることはありますか?
電子コミックで読んでも紙の書籍で読んでもおもしろいように、コマ割りには細心の注意を払ってトライ&エラーを繰り返しています。例えば、見開きの左のページに「なんだ」、右のページに「それは」とあったとしますよね。紙の書籍なら「なんだ、それは」と読めますが、そのまま電子コミック化してスマホやタブレットで横スクロールすると「それは、なんだ」と台詞が逆転してしまう。そうなると微妙にニュアンスが崩れたり、違和感が生じたりして、作品の魅力が損なわれかねません。
漫画は読まれるデバイスに左右されるので、スマホがしばらく無くならないのなら、電子コミックと紙のどちらかに最適化するのではなく、そのハイブリット型を追求していく必要があります。「電子コミックでカッコいい作品が、紙になってもカッコいい」。そんな状態を目指すトレンドが漫画界ではすでに始まっています。
――最後に、ネットやICTが発達する中、今後挑戦したいことがあれば教えてください。
デジタル技術の進歩に伴い、漫画に音楽を埋め込むといった事例もでてきており、Webの特性を活かした新しい表現方法はどんどんでてくるでしょう。ただ一方で、現状の漫画の枠組みにおいても、まだまだやれることはあると思っているので、個人的にはまずはそこを極めたいですよね。
そして今後は、ローカルでありながらグローバルを意識した作品を描いていきたい。世界を視野に入れるとなるとファンタジーに寄りがちですが、僕は『左ききのエレン』のようなリアルな群像劇を通じて日本人の美徳を描き続け、発信したいと考えています。
「これからもおもしろい漫画を描いていきたい」と、漫画家として真摯な姿勢を貫くかっぴーさん。ネットと紙の垣根がフラットになった今、両方のデバイスに応じた表現に磨きをかけるのは、これからの漫画家にとって必須条件なのかもしれません。
2021年の夏までには新連載が始まるそうです。ネットと紙。グローバルとローカル。一見相反するものをかけ合わせるかっぴーさんの今後から目が離せません。
リモートワーク、オンラインゲーム、スマートフォンのWi-Fiなど日々の仕事や暮らしで安定して高速な光回線が求められています。
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