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公開日:2022.03.24
更新日:2024.06.28
連載ネットの知恵袋 ネットの疑問あれこれ
最近ネットやニュースなどで「メタバース」という言葉をよく見かけるようになりました。例えば、2021年10月にFacebook®が新しい企業ブランド「Meta」を発表、2022年2月にYouTube®がメタバースへの参入を検討していると日本版公式ブログで公表するなど話題に事欠きません。
しかし、「メタバースとは何か?」「メタバースで何ができるのか?」など、話題になっているから気にはなってはいるものの、なんだかよくわからない、という方も多いでしょう。
メタバースとは、インターネットを利用した「仮想空間」で交流やサービスを楽しむ場所のことです。「難しそう」と感じるかもしれませんが、細田守監督作「サマーウォーズ®」の「仮想世界OZ」をイメージすると分かりやすいかもしれません。「仮想世界OZ」の世界観は、映画の中だけではなく、私たちの身近になっています。
本記事では、メタバースの基本知識から具体例、始め方までわかりやすく解説します。
メタバースとは、英語の「超越(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語で、インターネットを利用した「仮想空間」で交流やサービスを楽しむ場所のことです。メタバースの由来は1990年代に発表されたSF小説に登場する架空の仮想空間サービスです。
現代において推進されるメタバースの概念は新しく、共通認識が曖昧で方針の具体性・明確な定義が存在しません。そのため、さまざまな企業が「メタバース事業」という大きな括りで仮の定義を設け、メタバースの方向性を探っている段階です。
2022年時点のニュース記事や特集では、一般的に「アバター(操作キャラクター)が自由に活動できる仮想空間サービス」として捉えられています。
メタバースというキーワードから近未来的な印象を受けるかも知れませんが、駅広告やテレビCMにも登場するVTuberやバーチャルアイドルも、メタバースの在り方の1つと呼べるでしょう。
このように、一口にメタバースと言っても、個人的に自宅のパソコンやスマートフォンで楽しめるものから、事業用に最新の設備環境を必要とするものまで、利用できるサービスはさまざまです。
仮想空間は「電脳空間・サイバースペース」とも呼ばれ、かつては「インターネット」そのものや、インターネットを介したネットワーク上の交流場をあらわす言葉でした。
名前も姿も知らない相手と掲示板やメールを通じて交流したり、テレビや本では得られない情報を目にしたり。インターネットにつながったパソコンの画面に映る世界は、テレビ番組やドラマ、映画作品とは一線を画した夢のような仮想空間だったのです。
メタバースと仮想空間との大きな違いは、現実世界とより密接にリンクしているかどうかという点です。仮想空間は現実世界に近いオンライン上の空間そのものを指す言葉ですが、必ずしも現実とはリンクしていません。
一方、メタバースは、ユーザーがアバターを使って行動し、周りの人(アバター)と会話したり、空間を共有したりなど、仮想空間を活用した社会活動も含まれています。メタバースは将来的に取引や仕事といった現実世界とリンクした社会活動が行えるようになると期待されています。
VRとは「Virtual Reality」の略で、「仮想現実」を意味します。実際には起こっていないことを、限りなく実体験に近い体験を得ようとする「考え方」や「技術」の総称を指します。VRでは、現実世界に近い体験を再現することに重きを置かれています。
例えば、航空会社では客室乗務員に対し、VRゴーグルを使った機内訓練を行い、より実践的な研修をされていたりします。
一方、メタバースはインターネット上に存在する仮想の「空間」を指します。両者は本質的には別物ですが、VRはメタバースをよりリアルな感覚で楽しむための「手段」として共存することもありVR技術を使ったメタバースも存在します。
メタバース事業が急激に拡大した要因の1つは、世界的なパンデミックが挙げられます。ロックダウンや外出自粛によって中止・延期となったイベントを復活させ、経済活動の継続を目的として多くの企業がメタバースの持つ可能性に期待を寄せています。
総務省が公表している「情報通信白書 令和5年版」では、メタバースの世界市場は2022年8兆6,144億円から2030年には123兆9,738億円まで拡大すると予想されています。
技術進歩とサービス開発、活用される分野がメディアやエンターテインメントだけではなく、教育、小売りなどさまざまな領域で広がり、今後ますます市場規模が拡大すると考えられています。
メタバースの世界は一方的に視聴するテレビや映画と異なり、自分自身も「アバター」として存在することが重要です。現実世界で生きるアナログの自分に代わる、仮想空間に適した形式で自分の分身を作り出します。
実は、SNSもメタバースの一種です。SNS上では本名と顔写真を公開して活動する人、匿名・仮名と好きなアイコンで交流する人、名前も喋り方も変えて別人のように振舞う人など、形を変えてネットワーク上で自由な交流を楽しむ姿が見られます。
このように、メタバースは私たちの身近にすでに存在しています。この章では、メタバースの具体例を紹介します。
アメリカのゲーム会社が提供するバトルロワイヤル®ゲームでは、アバターを作成し、バトルゲームが楽しめるだけでなく、対戦をせずにプレイヤー同士で自由に交流を楽しめます。また、有名なミュージシャンがバーチャルライブを行ったことでも注目を集めました。
他にも、ユーザーがコンテンツを作り出せるクリエイティブモードがあり、キャラクターの外見を変更したり、エモートと呼ばれる仕草を自分で作れる点も魅力です。
感染症の流行により、出社を自粛せざるを得なくなり、会社内でのコミュニケーション機会が激減しました。そんな中、従来のビデオ会議では実現できなかった「臨場感のあるコミュニケーション」が行えるツールとしてビジネスの分野でもメタバースが活用されています。
メタバースを活用したバーチャルオフィスでは、まるでオフィスにいるような感覚でミーティングや共同作業が可能になります。
VRヘッドセットを使用すればVR内で自分のパソコンを使用したり、バーチャルなホワイトボードにアイデアを書き込んで他のメンバーと共有したりできます。
また、仮想空間で世界中のユーザーとコミュニケーションがとれるプラットフォームがあり、「ソーシャルVR」と呼ばれるジャンルに分類されています。
このサービスでは、音声でコミュニケーションを行うことはもちろん、従来のSNSとは異なりVR機材を利用したジェスチャーや握手などを含む身体的交流も可能です。バーチャル空間内でのイベントも多く開催され、個人だけでなく企業も活用をしています。
アバターで参加し、VTuberなどのバーチャルアーティストによる音楽ライブや各種展示などのコンテンツを楽しんだり、街を歩き回ってアーティストや他の来場者とコミュニケーションをとって楽しむなど、リアルと仮想空間がリンクしたメタバースならではの交流や体験をたのしめるイベントが2022年夏に行われました。
そのイベントでは、アバターなどの3Dデータや洋服、PC、飲食物など、さまざまな商品が売買されていました。
「VR・AR・MR※」はいずれも仮想空間のデジタル情報を現実において再現・体験させる技術です。昨今ではさまざまなジャンルで各技術を複合したサービスが増え、現実と仮想を融合させる先端技術は「XR(クロスリアリティ)」と総称されるようになりました。
※「AR」とは「Augmented Reality(拡張現実)」の略であり、現実空間に仮想世界を重ねて見せる技術のこと。「MR」とは「Mixed Reality(複合現実)」の略であり、現実空間と仮想世界をリアルタイムに融合させて見せる技術のこと。
現実世界と仮想空間を融合させる先端技術のこと
仮想現実を作るための映像処理技術の総称で、「xR」と表記される場合もある
1990年代にはすでにVR・ARなどのユーザー没入型メディア事業を手掛ける企業もありましたが、ネットワークの構築と普及が世界的に優先されたことにより、国内外においてXR事業の開発は一時的に失速しました。
現在はデジタルコンテンツを提供しやすい環境が整い、2030年には約123兆円規模の巨大事業になることが見込まれるメタバースは、XR技術とともに急ピッチで開発が進められています。
メタバースに興味を持っている方の中には、「始めてみたい」という方もいるかもしれません。メタバースを始めるには、3つのステップがあります。
メタバースを利用するには「VRゴーグル」や、手で持って操作する「コントローラー」が必要な場合があります。また、パソコンのスペックが低かったり、インターネットの通信速度が遅い場合は、アバターの動きがカクついたり、止まってしまったりする可能性があります。
快適にメタバースを楽しむならゲーミングPCなどの性能の高いパソコンや光回線など、大容量のデータ通信に対応できる環境を整えることが理想的です。
メタバースでは、アイテムやNFTの売買に仮想通貨が用いられることが多く、遊びたいメタバースで利用できる仮想通貨の保有が必要になる場合があります。しかし、メタバースで利用できる仮想通貨は、国内の(仮想通貨)取引所での取り扱いが少なく、国内と海外の(仮想通貨)取引所で口座を開設し、口座間で利用できる仮想通貨に換金しなければなりません。
1. 国内の取引所で口座を開設
2. 国内の取引所で仮想通貨購入
3. 海外の取引所で口座を開設
4. 仮想通貨をメタバースで利用する専用コインに換金
国内の取引所で仮想通貨を購入する際は、海外の取引所でも利用できる仮想通貨を購入しましょう。
専用コインを入手できたら、MetaMaskへコインを送金します。MetaMaskとは、さまざまなプラットフォームに対応している仮想通貨ウォレット(デジタル上の財布)のひとつです。
専用コインをMetaMaskへ送金したら、メタバースのプラットフォームと連携させます。画面の指示に従ってプラットフォームと MetaMaskが連携できたら、準備は完了です。
感染症の拡大により、往来や大人数の集まりが制限されたことから、各企業の取り組みは加速しています。ワクチンの接種が進み、感染拡大が始まった当初に比べ少しずつもとの生活に戻りつつありますが、やはり感染の不安は拭えません。
オンラインサービスが急速に充実・普及したことでこれまでと違った楽しみや、新しい生活様式の定着が進んでいることも要因のひとつと考えられます。
音楽業界ではライブ配信やアーカイブ・オンデマンド配信が定着していますよね。そこにメタバースの概念が加わって、現在はバーチャルライブ上でファン同士がアバターとして参加し、チャットやモーションで声援を送ったり、独自のグッズを入手できたりするなど、新しいライブへの取り組みが進められています。
また、国内企業におけるメタバースの実用例として、メタバースのプラットフォームを利用し、アバターによるモーションでの採決と電子サインを用いて世界初の「VR社員総会」に成功したことも話題を呼びました。
コロナ禍で自粛を余儀なくされた観光業界・冠婚葬祭業界も、ステイホームの形式を保ちつつ遠方から参加・参列できるよう、メタバースを取り入れたサービスの開発に乗り出しています。
一時期「VR内見」で話題となった不動産業界では、アバターとなって仮想空間を歩き、未竣工物件の完成イメージについて相談できるサービスを導入した企業もあります。
医療業界においても、外科手術・治療に関する遠隔施術やシミュレーションの他、患者のメンタルケア・治療においてメタバース技術の導入が進められています。
他にもメタバースサービスの独創的な事例として、ユーザーの声や映像を取り込みAI(人工知能)に思考や言動を学習させた「デジタル人格」を創造する技術開発などが報告されています。
近い将来、メタバース空間上にアバターとして人格を再現することで、現実に存在する「今の自分」と、アバターとなった「過去の自分や友人、家族」がオンラインで交流できる日も訪れるかも知れませんね。
全米民生技術協会(Consumer Technology Association、通称CTA)が主催する電子機器展示会CES 2022では、あらゆる分野の発表において「メタバース」のコンセプトが掲げられました。
まだまだ発展途上のメタバース業界ですが、今後あらゆる分野と場面で活用され、日常生活の中でその一端に触れる機会も増えてくることが予想されます。
本記事では、メタバースの基本知識から具体例、始め方、各業界の取り組みなどを解説しました。メタバースは、エンターテインメント以外にもビジネス用途で使われることも増えており、これからますます注目が高まっていくと考えられます。
最新のメタバース事情について積極的に情報収集を行なうことで、体験したくても時間的な都合で諦めていたイベントや、勇気が出ずに諦めていた体験にチャレンジできる可能性があります。
気になるキーワードとメタバースを組み合わせて、定期的にインターネット上で「こんなサービスはないかな?」と検索してみてはいかがでしょうか。最先端技術とたゆまぬ企業努力によって、これまでは不可能だったことも、いつのまにかメタバースの世界で実現しているかも知れません。
※本項に記載されている商品またはサービスなどの名称は、各社の商標または登録商標です。
※この記事は2024年3月21日現在の情報です。
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